歯科治療に関して、多くの人々が『歯を白くするには自費診療でなければならない』という認識を持っていると思います。特に、都心部の歯科医院では、自費診療の割合を増やすために保険診療ではメタル(金属補綴物)しか入れないところが多いことに驚かされます。でも、実は、保険診療で白い補綴物を入れることは可能です。
保険での白い補綴物
- C1(エナメル質齲蝕)→レジン充填
- C2(象牙質齲蝕)→レジン充填、レジンインレー、CAD/CAMインレー
- C3(歯髄まで達した齲蝕)→ファイバーポスト+レジンコア+CAD/CAM冠
保険で白い歯を手に入れる方法
白い歯を入れる方法は、ズバリ、あなた自身が『保険で白い補綴物を入れてください』とお願いすることです。
ただし、歯科医院の経営のためには、自費診療の割合を増やさなければならず、自費診療を獲得するのに必死です。この御時世、歯科医院の経営は苦しく、保険で白い補綴物を入れると、自費診療の「売り」が少なくなってしまい、自費診療率が下がってしまいます。ですから、保険では白い補綴物を入れないという歯科医院は都心部では多いのが実情です。信じられないことに、『当院ではそれはやっていない』と断ってくる歯科医院も多いと思います。
でも、そこで引き下がらないでください。
断られた場合は、その理由を説明してもらい、納得できなければ治療を中断して、近くの保健所なり厚生局に相談してみてください。保険診療をやっている歯科医院の歯科医師はみんな保険医ですので、保険診療をする義務があります。ですから、何かしらの指導をしてくださるはずです。
もちろん、メタル(金属補綴物)は悪いものではありません。
咬合力や補綴物を長く持たせる見地からは金属は他の保険の補綴物よりも優れています。特に補綴科出身の歯科医師は、金属に対して絶対的な信頼を持っております。歯科大学でも、歯科材料学では金属がもっとも優れているとされております。
でも、もしあなたが白い補綴物が良いのであれば、勇気を持って主張すべきです。
高い保険料を払っているのですから、むしろ、主張する権利があります。
あなたが保険診療で『先生にお任せ』すればするほど、メタル(金属補綴物)ばかりになってしまいます。
しかも現在、金属の価格が高騰中ですから、使う金属量を抑えるために、歯科用セメントで底をかさ増ししてからメタル(金属補綴物)を装着する歯科医院は少なくありません。歯髄保護という名目ですが、歯科材料学の見地からすると、欠陥建築と同じです。
ですから、メタル(金属補綴物)を入れても、金属のメリットが失われた欠陥補綴物であるかもしれないのです。
保険で白い補綴物が適用可能となるには?
もう一度振り返ると保険での白い補綴物には以下の治療法があります。
・C1(エナメル質齲蝕)→レジン充填
レジン:セラミックを粉々にしたものをプラスチックで固めたもの
・C2(象牙質齲蝕)→レジン充填、レジンインレー、CAD/CAMインレー
CAD/CAM:コンピューターにてセラミックとレジンのハイブリッド
・C3(歯髄まで達した齲蝕)→ファイバーポスト+レジンコア+CAD/CAM冠
ファイバーポスト:抜随したところに歯に近い繊維素材のポスト
この十年間で歯科保険の適用が変わり、多くの白い補綴物が保険で入れられるようになってきました。前歯(1番目の歯)から小臼歯(5番目の歯)にかけては、C4(齲蝕が進行し歯根だけの状態)にならない限り、白い補綴物が可能です。
ただし、第一大臼歯(6番目の歯)及び第二大臼歯(7番目の歯)に関しては条件があります。
【条件】第一大臼歯の場合
第一大臼歯(6番目の歯)は、上下顎両側の第二大臼歯が全て残存し、左右の咬合支持を有する患者において、過度な咬合圧が加わらない場合にのみ、CAD/CAMインレー又はCAD/CAM冠が可能です。
→この条件は、クリアする方々が多いと思われます。
→ただし、力仕事関係者やスポーツ選手の場合は、強度に優れたメタル(金属補綴物)のほうが適しているかもしれません。
【制限】第二大臼歯の場合
第二大臼歯(7番目の歯)は、CAD/CAMインレー及びCAD/CAM冠の保険適用がなく、白い補綴物はレジン充填及びレジンインレーのみとなっております。
→C3(歯髄まで達した齲蝕)以上の虫歯となって、神経を抜いてしまった歯には白い補綴物の適用はありません。
→なので、第二大臼歯を大切にしていきましょう。
今あるメタルインレーやメタルクラウンを保険で白くできるか?
では、今、銀歯があるのだけれども、白い補綴物に変えられるか?という疑問が生じます。金属アレルギーであれば、金属を取り除いて白い補綴物に変えることは可能です。でも、それ以外であれば厳密に言うと「審美診療」となるので、保険適用が適用されるか否かのせめぎあいとなります。いわば、グレーゾーンです。
ただし、厳密に言うと、メタルインレー(金属の詰め物)やメタルクラウン(金属の被せ物)では、その裏面は、接着剤が劣化してその隙間から虫歯菌が侵襲することで二次カリエスになっていることが多いものです。
そこで、私は、レントゲン写真を撮影して詰め物の下に齲蝕様の透過像が認められれば、二次カリエス(二次齲蝕)と診断し、メタル除去して虫歯を削って、白い補綴物にする治療をしておりました。
ですから、歯科医院を渡り歩くか(大変ですが…)、口コミなどで治療してくれそうなクリニックを探してみてください。
保険で使われる白い補綴物のデメリット
以上、保険でも多くの歯が白くできることを紹介してきました。もしかしたら、自費診療にする必要性がなくなったように感じるかもしれません。
でも、自費診療にはメリットも沢山あります。自費診療のセラミックやは歯の色が自然に近い色にできたり、不自然に白くできることも可能なので審美的には断然セラミックが優れています。他方、保険での白い補綴物は、色の選択肢が少なく、着色しやすい素材ですので、数年後には黄ばんでしまう可能性もあります。また、保険診療の補綴物は自費診療に比べて外れやすいという報告もあります(CAD/CAM冠が保険適用されたばかりのときの論文なので当時の技術的な問題の可能性も考えられます)。
ですので、金銭的に余裕がないときは保険で白い補綴物にして、余裕が出てきたときに自費診療に変えるのがベストな選択なのではないでしょうか。
伝えたかったこと
いかかだってしょうか。がっかりされた方もいる一方、通っていた歯科医院に対して怒りが込み上げてきた方もいるかもしれません。
でも、特に昔から歯科医院を経営されている先生方の多くは、金属に対する絶対的な信頼があります。歯科大学の補綴学でも歯科材料学でも、金属が一番優れていると教えられます。ですので、悪気があってメタル(金属補綴物)を入れている先生方ばかりではないことも御了承ください。そのような先生方からすれば、私のようにCAD/CAM冠やレジンインレーを勧めることに怒りを覚える先生方もいるはずです。
自分の歯である以上、補綴物を入れるには、ご自身が納得してから治療を受けるようにしましょう
私がここで伝えたかったことです。メタル(金属補綴物)を入れられてから、笑うときに手を口元に置いてしまう癖がついたり、大声を出して笑えなくなったという方々を何人もみてきました。私の経験からも、メタル(金属補綴物)除去をしてから皮膚の発疹が治った方や、数十年ぶりに笑顔を取り戻したと喜んでくれた方が少なからずおります。
ですから、もしメタルよりも白い補綴物のほうが良いのであれば、勇気を出して、『保険で白い補綴物を入れてください』と伝えてください。もし断られたら(本当は保険医であれば断ってはいけないのですが)、通っている歯科医院を変えましょう。あなたの歯は、あなたの歯科補綴物は、あなたに決める権利があるのです。
本日は、以上です。
質問等がありましたら、コメント欄にコメントください。次回以降のテーマの参考とさせていただきます。